こども映画教室@高知県 宿毛市 橋上小学校
-文化芸術による子供育成総合事業「赤いボールを主人公にした映画を撮ろう!」-
*こども映画教室のワークショップは、こども映画教室の知的財産です。許可なく同様または似通ったワークショップをすることを禁じます。
<開催概要>
日程:2019年7月4日(木)〜7月5日(金)
会場:高知県 宿毛市 橋上小学校
参加人数:23名(小学1~6年生)
主催:文化庁
制作:一般社団法人こども映画教室
特別講師:諏訪敦彦(すわ のぶひろ)
84年に8㎜で撮った『はなされるGANG』でPFFに入選。97年には『2/デュオ』で長編映画監督デビュー。ロッテルダム映画祭でNETPAC賞を受賞。2作目『M/OTHER』では三浦友和を起用してカンヌ映画祭国際批評家連盟賞を受賞。アラン・レネの『二十四時間の情事(ヒロシマ・モナムール)』を大胆にリメイクした3作目『H Story』など、日仏の名だたる俳優とコラボレーションしながら「新しい映画」を模索。ヨーロッパを中心に現代映画の担い手として世界的な評価を得る。日仏合作映画『不完全なふたり』は、ロカルノ映画祭(スイス)で審査員特別賞を受賞、フランスでもロングランを記録した。
また、映画教育を「映画を探究する場」として位置づけ、東京造形大学、映画美学校、東京藝術大学大学院で学生たちとコラボレーションもしている。
こども映画教室には2009年から参加し、今は一般社団法人こども映画教室の社員であり、理事である。
2018年公開のヌーヴェルヴァーグを代表する俳優ジャン=ピエール・レオー主演による『ライオンは今夜死ぬ』は自身のこども映画教室での体験から産まれた作品である。
最新作はモトーラ世理奈、西島秀俊、三浦友和、西田敏行をキャストに迎えた『風の電話』で、2020年春公開予定。
1日目
鑑賞ワーク
みんなで鑑賞するのは『赤い風船』(アルベール・ラモリス監督/1956年/仏)。
パリを舞台にした少年パスカルと赤い風船の物語です。
映画の中で赤い風船は自由自在に動き、言葉も話さないのに、まるで生きて「気持ち」があるように見えてとっても不思議です。
はじめは静かに映画を観ていましたが、だんだんと物語にのめり込んでいき、パスカルと一緒に一喜一憂したり、ボールの気持ちになって、声をあげたりする子もいました。先生たちも一緒に鑑賞しました。
映画を観終わったら、今度は『赤い風船』がどんな映画だったかをみんなで書き出しながら思い出します。
・どんな人が映っていた?
・どんな場所が映っていた?
・どんなできごとが起こった?
の3つの質問にみんなそれぞれ考えて、たくさん書き出していきます。
どんな映画だったか相談しながら書き出すチームや、黙々と書き出すチームなど。それぞれ、チームによって様々でした。
書き出した紙を映画の順番を思い出しながら、映画の始まりから終わりまでを表す長い紙(タイムラインシート)に貼っていきます。
書き出しワークの様子
黄色チーム
書き出しワークの様子
書き出しワークの様子
書き出しワークの様子
どんなものが映っていたかを思い出したら、次は「風船の気持ち」を考えます。
パスカルと出会ったときや、町のこども達に捕まったとき、風船はどんな気持ちだったんだろう?
みんな風船の気持ちになっていろいろな気持ちを風船型のカードに書き出していきます。
「パスカル好き!」「青いボールと友達になりたいなー」「ありがとう」「助けなきゃ!」など、
たくさんの気持ちが出ました。
撮影ワーク
「赤い風船」の気持ちをみんなで考えたら、次はいよいよ撮影!
みんなの映画の主人公は赤い風船ではなく「赤いボール」。
作るのは『赤いボールの冒険』という映画です。
まずは「ルールブック」が各チームに配られ、諏訪さんから映画をつくるうえでのルールが説明されます。
次に「ミッションカード」が配られ、1人1つずつ撮影のミッションをクリアしていきます。
ミッションをコンプリートして、撮影のコツもつかんだら、いよいよ本番。
鑑賞ワークのときに書いた「風船の気持ち」を1つ選び、それを元に撮影をしていきます。
どうやって撮ればボールの気持ちが映るかな?どんな場所が良いのかな?
天気にも恵まれ、快晴の中それぞれのチームが色々な場所へ行き撮影をしました。
赤チーム
赤いボールの気持ちは「楽しい」。理由は「自分たちと一緒に遊んだから」。お話の枠組が決まり撮影へ。映画の舞台に選ばれたのは校庭の片隅にあるブランコ。こどもたちが遊んでいるとそこへボールが転がってきます。男の子がボールを拾い上げ懐に抱えてブランコに乗ります。他の子たちも代わる代わるボールと一緒にブランコに乗ります。先ずロングで撮影し、カットを割って近寄っていきました。カメラの子がボールとの親密感をもっと出したいと提案。しばらく考えて彼が出したアイデアは、カメラごとブランコに乗る。いわゆる見た目ショット。視点についてはあまり問題にせず、とにかく「楽しい」気持ちの昂りを表現したいとのこと。上下する風景の躍動感、梅雨の切れ間の青空を捉えるため、ブランコを揺らすスピード、カメラをパンするタイミングなど工夫を凝らして撮影しました。カットの出来栄えにみんな大盛り上がり。その勢いで予定していなかった、こどもたちとボールが校庭をダッシュする、というシーンも撮って、撮影終了。編集は時間内に終わらなかったので給食を食べながら作業しました。見ているこちらまで楽しくなるパワフル且つ爽やかな作品に仕上がりました。
(チームリーダー/まーしー)
青チーム
青チームが選んだ気持ちは「かなしい」。何が起こったら悲しいか、みんなで考えながら学校の外へ出ました。ボール遊びをしながら「最初赤いボールが遊んでもらっていたのに、他のボールに取られて一人ぼっちになったら悲しいんじゃないか?」というアイデアが出てきました。みんな、これだ!という確信を持って撮影開始!赤いボールが悲しんでいる様子を撮影の仕方でうまく表現できました。
そのあとはみんなで近くの神社へ。何かが起こりそうな神社の雰囲気をうまく掴み、神社の境内あたりから一人でに転がってくるボールが男の子と出会う、というシチュエーションを追加することができました。みんなが最後まで粘って出来上がった映画は、赤いボールの悲しさだけではなく、寂しさや嫉妬も見え隠れする面白い映画になりました!(チームリーダー/ふかちゃん)
青チーム写真
青チーム写真
緑チーム
農道・保育園・中学校と、たくさんの場所で撮影をしました。鑑賞ワークのときは消極的だった子も、撮影ワークには積極的に参加していて、チーム全員が映画作りを楽しんでいました。「映画作りって、こんなに楽しんだね!」と、キラキラした顔で言っていたのが忘れられません。時間ギリギリまで撮影を続け、最後は全力疾走で小学校へ戻りました。
編集の途中、最後のシーンを撮り忘れた!と気がつき、急いで体育館で追加撮影をしました。全員で協力をし、最後まで全力で映画作りをしました。
(チームリーダー / かずちゃん)
オレンジチーム
オレンジチームは「一緒にいて楽しい」という赤いボールの気持ちを撮ることにしました。そこで思いついたのが「みんなと遊びたくてやってきた赤いボールがみんなと友達になって一緒に遊ぶ」というお話です。その撮影場所は、今はもう使われていないという、かつてみんなが通った懐かしの保育園です。最初のカットは、みんながいるところに赤いボールがやってきて一緒に遊ぶという場面。みんなはどう動くのか、カメラはどこから撮るのか、そしてボールはどのように登場するのか。みんなで悩みながら何度も何度も納得がいくまで繰り返していました。そのあとは、ボールに誘われてみんなでジャングルジムへ行き、上から一緒にジャンプするという展開に。どうすればみんながボールに誘われているように見えるのか、これもまた何度も何度も撮り直しました。
ボールの動きが人より先行することで、そこに感情があるかのように見えてきます。そして最後、今度はみんながボールになったかのようにジャングルジムの上から一斉に飛び降りる……。ボールの気持ちだけではなく、人の気持ちの変化も見えてくるようです。
(チームリーダー/おっくん)
むらさきチーム
「ありがとう」という気持ちを撮ろうと決めたみんな。ボールが何に対して「ありがとう」なのか考えて「助けてくれてありがとう」の気持ちを撮ることに。ボールをどんな状況から救い出すか?ネコから、ハマってしまったところから、木に引っかかってしまったところから、いじめられているところから。いろいろな状況をみんなで考えて、そこからボールを助け出すシーンをたくさんとりました。入れたいシーンを全部つないだら、ルールの1分を超える長さに…!お昼ご飯の休憩もずっと編集を粘って、最後は1分ちょうどぴったりにおさめました。
(チームリーダー/ぬっきー)
2日目
2日目は、みんなが撮影&編集した映画の上映会!
上映会には中学生や地域の方々もゲストで観に来てくれました。
赤いボールの旅は「横浜」から「ボストン」「サンパウロ」「サンティアゴ」「新荘小学校」から川を下って「橋上小学校」へ!
みんなの映画がつながって、橋上小学校でのボールの旅が繰り広げられます。
諏訪さんがみんなが作った映画を観て「同じシーンでも、見方によってボールの気持ちが違うふうに見えるし、人によって捉え方も違うよね。映画を観て思ったことに、間違いはないんだよ。」ってお話してましたね。
上映会に来てくれた中学生からも、色々と感想や意見が出ました。
みんなのつくった映画
橋上小学校を出発した赤いボールは、次はどこへ行くのでしょうか?
「赤いボール」の冒険は、まだまだ続きます。
赤いボールの次の冒険はこちら!
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順次アップ予定
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